『アイルランドモノ語り』栩木伸明著ーーー聖パトリックス・デーに

3月17日はアイルランドの祝日、セント・パトリックス・デー。
アイルランドにキリスト教を広めた、セント・パトリックの命日です。
キリスト教を広めるといっても、
それまでアイルランドにあった土着の宗教を根絶やしにせず、
キリスト教との融合をはかりながら布教したといいます。
だからこそ、セント・パトリックはいまも祝日になるほど慕われているということでしょう。

東京の青山から明治神宮へ向かう表参道では、
毎年セント・パトリックス・デーに近い週末(今年は16日)にパレードがあります。
が、明治神宮へは向かわず、参道を逆方向に進むのがおもしろい。
先週表参道へ出かけたときには、アイルランドの国旗がずらりと掲げられていました。
表参道、三月の風物詩のひとつです。

この日にちなんで、日本の歳時記ではありませんが、アイルランドのお話を少し。

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アイルランドには、ダブリンに一度行ったきりですが、
必ずもう一度訪れたいと思っています。
それほどわたくしにとって魅力ある国でした。

そんなふうにわたくしがアイルランドに興味を持ったのは、
アイルランド文学者の栩木伸明さんの影響です。
栩木さんはこれまで何度かアイルランドの首都ダブリンに暮らし、
その前後にもたびたび各地を訪れています。
アイルランド文学の翻訳もなさり、またご自身の著作も多数。

昨年上梓された『アイルランドモノ語り』(みすず書房)は、
栩木さんが幾度となく訪れたアイルランドで見つけた「モノ」たちと、
アイルランド文学、歴史、文化、そしてアイルランドに住む人々を絡み合わせて、
心楽しくも豊かな文章に編み上げた紀行文です。

教養とは、こういう文章を書けることをいうのだなあ。
心温かくて、やさしくてお茶目で、好奇心を失わない。
バランスがとれているのですね。
しかも厳しいところはビシッとキメてくれる。
まるでアイルランドのあの複雑な紐結びのように、
栩木さんの文章には次々と興味深いモノや人や物語が登場しては他者と絡まり合い、
けれど最後には気持ちよくすーっと一本の紐に解かれていきます。
その見事さ。
読み手としての幸福を味わえます。

喜ばしいことに『アイルランドモノ語り』は今年、読売文学賞を受賞されました。

栩木さんは、実はわたくしの高校の美術部の先輩です。
高校生のころから大人っぽく落ち着いていて、
何でも知っている「博識」な先輩として通っていました。
美術室では、顧問の先生とも対等に美術評論など交わしていたのですから。

ご縁があって、『アイルランドモノ語り』に装画を描かせていただきました。
栩木さんのお宅に編集の方とお邪魔して、本の中に登場する「モノ」たちを「紹介」していただき、
絵にする候補を相談して選び、お借りして描いたのでした。
鶏のおうち、古い本、馬車の置物など、楽しくも貴重な「モノ」ばかり。
わたくしにとっても、とても思い出深い仕事になりました。

毎年セント・パトリックス・デーの前後には、栩木さん直伝のアイリッシュ・シチューを作ります。
今週末は、ラムを買って来なくっちゃ。


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by happyfrosty | 2014-03-18 18:47 | 歳時記ぐらし
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